- FAX廃止の是非 -
つい最近ですが、国が推し進めようとしている、省庁などでの業務におけるFAX利用について原則廃止とする取り組みが、難航しているという情報を見かけました。相互の連絡手段ではメールやチャットツールが浸透していて、今の時代FAXなんて本当に必要なのかという疑問の声は大いに納得できる指摘でありますし、私自身も個人的には前者の利用の方が好ましいと思っています。ただ、こと仕事上となりますと、FAXの存在止む無しに思えて仕方ありません。特に急速な全廃活動は前途多難を極めるから、今は「そこそこ」で決着しておいた方が良いのではと感じるところです(今がいつまでを指すのかという疑問もありますが)。
メールを利用していく上で1番の懸念は情報漏洩ではないかと思います。これは内部的なミスよって発生する漏洩と、迷惑メールといった外部的な攻撃から生まれてしまう漏洩とで大別できると思いますが、組織が大きければ大きいほど、責任者には各職員個人の労務管理と全容把握が難しくなるので両者の危険性は高くなっていくと思います。一方で個人事業に近い形態の組織などでは前者と比べて圧倒的に危険性が下がりますので(身軽な点がこういった組織の長所でもありますし)、規模の比較を考慮せずに此の国で1番大きな組織である国のFAXうんぬんの運用について、一個人から鋭利な意見を申すのもかなり無理があるのではないかと感じるところです。(迷惑メールについては、「WEBとどう付き合うか。悩んだお話」でも書きましたのでご覧ください)。
そもそも紙でないこと自体が不便である可能性も指摘できます。メールやPDFは何らかの機械がないと絶対に見れない代物ですから、スマートフォン・タブレット・パソコン等を用意した上で、その機械の画面の範囲内で閲覧する、これも特にスマートフォンのような小さいものですと苦痛で作業が捗らないのも致し方ない気がします。また、たとえ大きな画面であっても見たいページに飛ぶ、さっき見たページを見かえすといった作業を連続的にこなす場合だと、やはり紙の方がメール・PDFより快適です。紙はペラペラ何度も行き来すると紙のシワが出来るからここだと分かりやすいのでしょう。すなわち、全部で三桁四桁に及ぶような膨大な資料をページを超えて比較検討する作業には明らかに向いていないと言え、これは国・自治体に限らずあらゆる官公署の業務(士業もそうですが)に当てはまる気がいたします。
もっと言いますと、そもそも画面を通して文字を読み続けるという行為に対して、我々人間にはマシーンにでもならない限り限界があるのではと思います。人の視覚情報を大きく文字・イラスト・写真に分けていきますと、行政手続は「ほぼ文字のみ」の一択と言えます(法治国家なので当然なのですが)。もちろん国民の行政・司法全般へのアクセスの改善も考えなければいけませんので、イラスト・写真をもっと利用した方が良いのですが(実際に新しい制度などをイラストも交えて公表する官公署も増えている気がします)、これらは文字に比べて1つ1つ完成するまでに多くの時間と労力を使いますので、多用すると業務効率の大きな妨げになり、利用が難しい側面があるかと思います。
どこでも自由に閲覧できるメールにも大きなメリットがありますし、メール・PDFも印刷してしまえば紙になります(じゃあ何でデータで送るんだと言われかねないですが)ので、上記の見解には正確と言えないところもありますが、メール/PDF=便利・FAX/紙=不便、という構造が余りに浸透している気がしまして、そもそもそうとも限らないという論調もいずれ出てくるのかなと思います。
メール(PDF)とFAX(紙)
- 守秘義務の遵守 -
以上は、特に利便性の視点から考えてみましたが、仮にその点は技術発展等により大差が無くなったと想定した場合、データと紙の運用は果たしてどちらが正しいか、考えてみますと、いかにして守秘義務を遵守できる(また出来続ける)体制が作れるか、この点に尽きるのではないかと思います。今や守秘義務というものは、特定の業種に課せられるものではなくて、全ての仕事・取引・行事・コミュニケーション、子供から年配まで男女問わず対象となる義務と言えます(スマートフォンの浸透の功罪ともとれますが)。
そう考えますと、守秘義務を遵守出来る(また出来続ける)のであれば、どちらでも良いのではないかと思いますし、相手方との関係性の中で決めていけば良いのかもしれません。ただ、前述しました通り、組織は大小様々であり国ほど大きな組織(人数や施設だけでなく、行使できる権限、対象となる業務の範囲など)は此の日本に存在しないのは自明です。どれだけ個人や会社に力があり、資産があり、影響力を持っていたとしても、(日本にいる限り)国という組織を超えることは出来ません。話がそれかけましたが、そういった規模の違いの考慮なしで、国の遵守義務の体制について意見をすることは到底不可能なことと思います。国より大きな組織があれば、その組織の体制が大いに参考になるのですが。
すなわち、国には誰もが経験したことの無い最高難易度の守秘義務が課せられている(元々課せられてはいるが、デジタル化の浸透によって以前よりもその危険性に出くわす可能性が格段に高くなったというのが正しいかもしれません)。そう捉えますと、私など米粒ほどの守秘義務対象者からすれば、国の遵守体制について意見ではなく見守る他無いのだと感じます。
守秘義務の遵守を優先に
text&illustration : takahasi kei