- 相続土地国庫帰属制度の概要 -
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が令和5年4月27日に施行しまして、相続又は遺贈により土地の所有権(または共有持分)を取得した方が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。同法第1条にもあるとおり、この制度は「所有者不明土地の発生の抑制」を主なテーマに位置付けた法律となっておりまして、その結果、必要な土地は相続、不要な土地は相続放棄をすることも(制度上は)可能であると言えます。しかしながら、新しく出来たばかりなので運用面の解釈など、これからの積み重ねによるかと思われますが、関心の高いテーマになりますので、以下に概要をまとめていきたいと思います。
申請人
(法第1条・法第2条1項2項)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内54頁)
申請人は、相続・遺贈(受贈者が相続人の場合に限る)によって土地の所有権を取得した相続人となります。単独所有はもちろん、共有者であっても上記の相続人を含めて全員が共同して行うことができれば、申請可能です。対象不動産は、土地のみです。建物は含みません。相続時期は、施行日後はもちろん、本制度開始前に発生した相続であっても、申請可能です。申請代理人は、法定代理人(成年後見人等)のみです。任意代理人の利用は出来ません(但し、弁護士・司法書士・行政書士につき申請書の作成代行が可能)。
申請人
申請窓口
(施行規則第1条・第9条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内4頁・27頁)
申請窓口は、土地の所在地を管轄する法務局本局です。支局や出張所には申請出来ません。申請方法は、窓口へ持参または郵送による方法が可能です。なお本申請には、申請から国庫帰属の決定(却下、不承認の判断を含む)までに一定の審査期間(半年から1年程度)を要するとされています。
申請窓口
申請書類
(法第3条)(施行規則第2条・第3条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内7頁・32頁・37頁)
申請に必要な書類は、
・承認申請書
・申請人全員の印鑑証明書(期限なし)
・相続・遺贈(受贈者が相続人の場合に限る)によって土地の所有権を取得した相続人であることを証する書面((例)遺産分割による取得の場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・被相続人の住民票の写し・相続人の現在戸籍謄本・相続人の住民票の写し・遺産分割協議書)
・承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
・承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
・法定代理人によって申請をするときは、戸籍事項証明書その他その資格を証する書面
・申請者が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面(会社法人等番号の利用可能)
・固定資産税評価証明書(任意)
・承認申請土地の境界等に関する資料(任意)
※その他個別に法務局から資料の提出が求められることもあるようです。なお、任意代理人に申請書の作成代行を依頼しても、当該代理人への委任状は不要です。
申請書類
以上の流れで申請をすれば必ず国庫への帰属が認められる、というわけではありません。申請が通らない場合として、却下(実地調査には進まず申請時に却下し、国庫への帰属なし)と不承認(実地調査等の審査の段階で不承認とし、国庫への帰属なし)が制度として設けられておりますので、以下に整理して記載いたします。
申請が却下となる場合
(法第4条)(施行令第2条)(施行規則第14条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内17頁~19頁)
申請が却下となる場合は、申請者に申請権限がない場合、申請者が法務局担当官による調査を拒んだ場合、申請書類の提出義務・審査手数料の納付義務に反する場合のほか、申請対象となる土地に以下の事情が判明した場合です。
・土地に建物が存する場合
・土地に担保権や用益権などが設定されている場合
・土地が現在通路となっている
・墓地
・境内地
・土地が水道用地として利用中になっている
・土地が用悪水路として利用中になっている
・土地がため池として利用中になっている
・土地が特定有害物質により、土壌汚染されている
・土地の境界が明らかでない場合
・土地の所有権につき、その存否、帰属、範囲について他者と争いがある場合
申請が却下となる場合
申請が不承認となる場合
(法第5条)(施行令第4条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内20頁~25頁)
・土地に崖があり、通常管理に過分の費用または労力を要する場合
・土地に工作物、車両、樹木、その他の有体物があり、通常の管理または処分を阻害する場合
・土地の地下に有体物があり、除去しなければ通常の管理または処分ができない場合
・土地が他の土地に囲まれて公道に通じず、現在通行が妨害されている。このような場合、隣接土地所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができないため
・土地が池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至らず、現在通行が妨害されている。または崖があって土地と公道とに著しい高低差があり、現在通行が妨害されている。このような場合、隣接土地所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができないため
・土地が現在、所有権に基づく使用または収益を妨害されている場合。このような場合、隣接土地所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができないため
・土地に土砂の崩壊、地割れ、陥没、水又は汚液の漏出等の災害が発生しており(そのおそれがある)、土地やその土地周辺の人の生命・身体・財産に被害が生じており(そのおそれがある)、被害の拡大・発生防止のために、土地に対して軽微でない現状変更の措置を講ずる必要がある場合。このような土地は、通常管理または処分に過分の費用または労力を要するため
・土地に鳥獣、病害虫等が生息し、その動物によって土地やその土地周辺の人の生命・身体、農産物・樹木に軽微ではない被害が生じている(そのおそれがある)場合。このような土地は、通常管理または処分に過分の費用または労力を要するため
・国による造林・間伐・保育などの整備が必要な森林となっている土地。このような土地は、通常管理または処分に過分の費用または労力を要するため
・土地が国庫に帰属した後で、国が管理に要する費用以外の金銭債務を、法令の規定に基づき負担することになる場合。このような土地は、通常管理または処分に過分の費用または労力を要するため
・土地が国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき申請人の金銭債務を国が承継することになる場合。このような土地は、通常管理または処分に過分の費用または労力を要するため
申請が不承認となる場合
制度の利用には、以下の審査手数料と負担金が必要となります。
審査手数料
(法第3条)(施行令第3条)(施行規則第5条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内30頁)
申請時に審査手数料が発生します。金額は、土地の一筆ごとに1万4000円となります。納付後は返還されませんのでご注意ください。
負担金
(法第10条)(施行令第5条)(施行規則第19条)
(法務省発行:相続土地国庫帰属制度のご案内45頁~49頁)
無事国庫帰属の申請が承認されますと、承認時に負担金が発生します。これは、10年分の土地管理費相当額という名目です。承認申請に係る土地を、「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に区分し、この区分に応じて負担金の額が決定されます。原則は20万円ですが、面積や指定された区域により細かく設定されますのでご注意ください。また、土地の区分は、提出された書面の審査、関係機関からの資料収集、実地調査などによって、客観的事実に基づき判断されます。
審査手数料と負担金
text&illustration : takahasi kei