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みなし株主総会における、代表取締役選定と利益相反取引承認の比較

2021.6.26.SAT


- 株主総会とみなし株主総会 -


みなし株主総会とは、会社法第319条による株主総会のことでありまして(条文は掲載日時点となります)、株主を一定の場所に招集し、議長が議案の審議を求め、議事を進行していく通常の株主総会とは違い、書面(又は電磁的方法)によって株主総会の決議があったものとみなす(正式に株主総会を開き決議したこととみなす)制度のことを意味します。このみなし株主総会を活用すれば、株主や役員といった多くの会社関係者に、ある場所に一定時間集まっていただく必要がないため、会場へと足を運びにくい昨今の事情においては、有効な手段になると思われます。ただし、導入するには株主全員の同意が必要となりますので、大多数の株主がいる会社だったり、流動性の高い上場会社などでは難しいでしょう。家族経営の会社や1人会社などが、主な対象となってくるのではないでしょうか。

みなし株主総会は提案から必要となりますので、提案→同意→みなし決議の一連の流れを書面化して保存しておくことをお勧めします。電磁的方法でも可能ですので、電子署名の用意(Adobe Acrobat等)をお願いします(ただし、みなし決議自体は登記申請との兼ね合いで書面化させていただきます)。

みなし決議への記名押印について、以下検討したいと思います。

そもそもの集合して決議する株主総会議事録の場合、原則として記名押印義務はありません。但し、定款に議長および出席取締役の記名押印を規定している場合は、定款に従うことになりますので、実際には記名押印する場合がほとんどだと思われます。また、登記実務上においても原本証明の意味も含めて記名押印があった方が好ましいので、代表取締役は会社実印、その他出席取締役は認印を押して頂けたらと思います。

少し話がそれますが、署名のみでも良いのでしょうか?取締役会議事録の場合では、会社法第369条第3項に「署名又は記名押印」とありますので、そういった規定から派生を考えられなくもないのですが、昭和37.6.27民甲第1657号解答、昭和55.11.22民三第6721号解答などによりますと、署名のみの場合、「右は議事録に相違ない」旨を記載して、署名者の押印と印鑑証明書の添付を求めています。但し、上記先例は、あくまで取締役会議事録かつ利益相反取引の場面における不動産登記法上の添付書面(いわゆる、許可書)の件になりますので、そもそも射程が株主総会議事録にまで及ぶのか定かでありません。少なくとも、手続法上印鑑証明書の添付が求められる場合は、記名押印が適していると考えられるのではないかと思われますので、全般的に記名押印で対応するのが無難なのではないでしょうか。この辺りは既に廃止されていますが、商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律も参照して頂けたらと思います。

なお、さらに本人の意志表示の有効性を高めるべき場面であるならば、署名かつ押印(実印)まで引き上げるべきという考え方もありますが、法令上の要求がない限り、実際には具体的案件と担当される司法書士の判断によるかと思われます。

対して、みなし株主総会議事録の場合ですが、これも基本的には株主総会議事録と同じ対応になります。しかしながら、定款に記名押印者が規定されている場合は、少ないと思われます。また、議長氏名の記載が要求されない(会社法施行規則72条4項参照)ことから(そもそも株主総会の開催を「みなし」ているので議長の存在自体を観念し難い)、登記実務上は議事録作成者(通常は代表取締役)の記名押印(会社実印)で対応することが圧倒的に多いのではないでしょうか。

株主総会とみなし株主総会

株主総会とみなし株主総会

- 代表取締役選定と利益相反取引承認の比較 -


以上を踏まえた上で、代表取締役の選定(A→Bへの変更)と利益相反取引の承認を、株主総会決議又はみなし株主総会決議で行う場合を比較しながら、以下検討したいと思います(取締役会非設置会社を前提といたします)。

代表取締役の選定(A→Bへの変更)を行う場合、定款規定ではなく商業登記規則第61条第6項の規定に従いまして、議長及び(株主総会に)出席した取締役全員が記名押印しなければなりません。この際に、皆様全員個人の実印を押し、印鑑証明書の添付が必要となります。但し、変更前の代表取締役(この場合のA)が株主総会議事録に会社実印を押印したときは、このような措置は不要となります(商業登記規則第61条第6項但書)。

以上が株主総会決議の場合ですが、対してみなし株主総会決議の場合、前述の通り、会議自体は開催していません。その為、登記実務上は議事録作成者に記名押印(個人の実印)して頂き、印鑑証明書の添付が必要となりますが、株主総会の場合と同様に、変更前の代表取締役(この場合のA)がみなし株主総会議事録に会社実印を押印したときは、このような措置は不要となります。以上は、A→Bを前提としたお話ですが、仮にA→Aの場合ですと、会社の実印を押すこと自体に障害が無いので、印鑑証明書の用意は不要かと思われます。

次に、利益相反取引の承認を行う場合ですが、利益相反取引は会社法第356条・365条の規定から、利益相反取引に該当すべき行為、事前の承認、事後の報告およびその機関等が規定されているのですが、ここから不動産の売買といった、ある具体的な取引が不動産登記として顕出された場合に、登記実務上の取扱いが論点となります。これは、先ほどの代表取締役の選定といった、会社内部での行為を登記にした場合、すなわち商業登記法上の規律とは異なりますので、趣旨の違いにはご理解ください(なお、どのような行為が、利益相反取引に該当すべき行為なのかは大きな論点として長くなるので、ここでは省略いたします)。

上記で少し触れましたが、利益相反取引の承認決議は不動産登記令第7条第1項第5号ハの「第三者の承諾を証する情報(いわゆる、許可書)」に該当しまして、議事録作成者は記名押印が必要となりますが(不動産登記令第19条)、議長及び出席した取締役等の記名押印は必要ないとされています。この際に、議事録作成者が代表取締役の場合は会社実印を、その他の場合は個人実印を押し、印鑑証明書の添付が必要です(添付省略は不動産登記規則第50条第2項を参照ください)。

以上が株主総会決議の場合ですが、対してみなし株主総会決議の場合、前述の通り、会議自体は開催していません。ここまでは代表取締役の選定と同じですが、議事録作成者の記名押印が必要な点は(結論は同じですが)、不動産登記令第19条を根拠としています。この際に、議事録作成者が代表取締役の場合は会社実印を、その他の場合は個人実印を押し、印鑑証明書の添付が必要な点は、利益相反取引の承認の株主総会決議の場合と同じであり、添付省略も不動産登記規則第50条第2項によります。また、みなし株主総会を行う場合には株主全員の同意書が必要となるのは、前述の通りですが、この同意書(株主個人の実印と印鑑証明書)も許可書として使用することが出来(平成18.3.29民二第755号民事局長通達)、その点は代表取締役の選定の場合とは差異があります。

以上のように、みなし株主総会は利便性の高い制度ですので、ぜひ導入をご検討されてみて下さい。

代表取締役選定と利益相反取引承認の比較

代表取締役選定と利益相反取引承認の比較

text&illustration : takahasi kei


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