忘れられない時間だった。東京へ戻ってきてもう何日も経つが、心半分は遠い北国に置き去ったような感覚が未だにある。ここに居ても手につかないことが多く、置いてきた心臓を探しては1人うるうると・・。なんというか、謂れ無い寂しさがある。
10月初旬に、タイトルにした道順の1人旅をしてきた。随分前から「呑み鉄」なるものに憧れていて、JR函館本線を各駅停車で移動することにした。移動だけで1日の大半を過ごすという、何とも贅を尽くした旅である。
このwebを作った時には、他人の旅情という、訪問してくれた方の利益にもならないようなことを載せる予定は毛頭無かったのだが、前述通り、北へ置いてきてしまった心に報い、明日への活力を再び取り戻す為に、形にしておこうと思う。似たことを計画している方以外には、つまらない記事だと思います。ごめんなさい。
<1日目>
東京駅丸の内中央口から
朝6時過ぎの丸の内中央口。こんなにも人がいない東京駅は初めてみた。数名の警備員とランニング中の方だけ。朝が早すぎてスターバックスも開いていない。
はやぶさ3号
7時00分発はやぶさ3号。まずは新青森を目指す。もちろん函館までは新幹線で行けるのだが、敢えて青森で降りる。早く着くのが目的ではないので(そして、この決断が大正解だったことを後々に知った)。JR東日本は、えきねっとで新幹線予約すると、チケットレスで乗り込みが出来て大変便利である。
花巻市付近
初秋の緩やかな田畑が美しい。東北ならではの風景なのだろうか。天候に恵まれる。散々雨が降ると言われたが、この旅通して傘をさすことはなかった。
新青森駅
午前中のうちに新青森駅に到着。初めてきた青森県。気のせいか少し空気が冷たく感じる。カラッと澄んでいて心地良い。新幹線の開業によってに出来た新駅舎は、とても綺麗だった。
青森駅
青森駅まで移動する。海に近いせいか、風が強い。ここから函館まではフェリーで移動することにした。調べるとフェリーの搭乗まで時間があるので、初めての青森を少し散策してみる。
善知鳥(うとう)神社
青森駅を西へ歩いていると、善知鳥(うとう)神社という敷地の広い神社があった。街の中心地にこれだけの敷地の広さなら、この辺りの有名な神社なのかもしれない。旅の安全を祈願しよう。
青森港まで徒歩
昼の腹ごしらえを終え、スターバックスでコーヒーをのみながら、青森弁をたっぷり堪能させて頂いた。「(コーヒーは)飲んでいかれます?」、青森弁は文頭に強めのアクセントがくるらしい。そのせいか、すごく純粋で真っ直ぐなものを感じた。一方で、西日本では尻上がりに言葉が強くなる傾向があり、より感情チックな気がする。「はい?」、何度か聞き返してしまった。店員の方、ごめんなさい。バスがあまり無いようなので、ここからは歩いて青森港を目指す。駅から1時間もあれば着くだろう。海に沿って進んだ。
ユニバース
途中で、青森のスーパーを見つけた。これは寄るべし。観光地を効率良くまわるだけが目的ではない。この佇まい、大好きだ。軽自動車が多いな。
ユニバースの鮮魚売り場
煮だこ・ボイルたこ・酢だこ・たこ炙り。おいおい、たこばっかじゃん。まじか・・・こんなのはじめてみたわ。津軽海峡を有し、漁業資源豊富な青森県。タコの楽しみ方も決して1つじゃ終わらせないよ。さすがです。東北随一漁業県の底知れないポテンシャルを垣間みた。
津軽海峡フェリー・青森ターミナル
圧倒的なたこパンチにやられつつ、ユニバースで少しアルコールを購入していると、フェリーの搭乗時間が迫ってくる。まずい、急いで歩こう(たこは買わない)。青森港に到着すると既にフェリーが準備完了していた。急いで手続きする。それにしても、大きな船だ。
津軽海峡フェリー・後部デッキ
14時過ぎ、青森港を出発する。あっという間の青森滞在時間だった。だけど、既に染まったような気持ちになる(少しだけ青森県民って自称したくなっていた)。ありがとう、青森。
津軽海峡フェリー・後部デッキ
さっきまで近くに見えた青森港も小さくなる。手を振って見送ってくれたフェリー会社の方々も、全く見えない。さあ、次に向かうのは函館。4時間弱かかる船旅のようだ。
津軽海峡フェリー・後部デッキ
しかし、天候に恵まれた。風が心地良い。
津軽海峡フェリー・東側デッキ
航路途中、下北半島に迫る。深く青い海に海岸まで連なる山々。自然の力強さだけが際立つ光景だった。
津軽海峡フェリー・西側デッキ
カラーのままにした。夕暮れ時、太陽が西へと沈む瞬間が感動すぎて。言葉はない。
津軽海峡フェリー・東側デッキ
沈む太陽。「ん?まさか」と思い東側へと急いで移動する。「月だ・・」。太陽と月が同時に津軽海峡の中にある。なんていう瞬間だろう。月の灯りの「赤」と大空の「青」が、尊いほどの美しさを生み出している。随分前からwebのtopページを同じグラデーションにしているが、「これだ!」と知りつつ表現したかのような錯覚に陥る。出会うべくして出会ったのだろうか。
ともかく、時間はかかってもフェリーという行程にして大正解だった。この後席に戻り、ユニバースで購入した梅酒を頂き、ほろ酔いなった頃には函館フェリーターミナルに到着した。ほとんどの時間をデッキで過ごしていた。長く充実した1日目を終えた。
<2日目>
赤レンガ倉庫
はじめての函館。ここからは函館本線に乗り、一気に小樽まで移動する予定である。しかし、各駅停車で小樽まで移動するのは、1日作業となる。はじめてのことであり、不安でしょうがない。前日も大移動だったので、ここは小休止として函館にもう1日滞在し、明日への英気を養うこととした。よって2日目は観光。
八幡坂
有名な八幡坂(はちまんざか)。「やわたざか」と読むと、ずっと勘違いしていた。左隣には、ロシア極東連邦総合大学函館校。あたり一帯には、ヨーロッパ風の建築物がたくさん建っている。また、その隣に神社仏閣もある、何とも風情ある不思議な街並みだ。こういったものを見ると、北海道なんだなと実感する。そして、住居には日本家屋が見当たらない。やはり、ここは本州とは違う点なのだろう。そして、こういった名所に、あちこち中学生らしきグループがいた。今日の函館は街中修学旅行なのだろうか。
函館山
津軽海峡が綺麗に見えた。昨日までいた青森は、見えない。
函館山
函館山から市内を眺める風景は秀逸だ。改めて素敵な街に訪れていることを実感した。
この後も少し観光をして、昼食を食べに朝市へ向かった。朝市は観光客向けなのだろう、昼でも開いている。適当にお店を見つけ、まぐろ丼を頂いた。当然まぐろは新鮮で美味しいのだが、ご飯が大盛り過ぎて驚いた。しかも、「ホッカホカの白米」である。裏側が熱で白く変色したまぐろを1枚おかずに、大量の「ホッカホカの白米」を食べる羽目になる(泣)。ホッカホカはないよ・・。もう1度赤レンガ倉庫に戻り、スターバックスで冷たい抹茶フラペチーノを飲み、口直しをした。「今日は暑いですね」。店員の方が話してくれて、少しホッとする。「そうですね」。まあ、さっきまで口の中がホッカホカだったのよね。函館は有名な箇所しか知らず、今日の宿の温泉が1番の目標だったので、観光は早めに切り上げ2日目を終了した。早めに寝て明日に備えよう。
<3日目>
北海道
よく寝れた。今日は大移動の3日目である。現在地は函館。ここから小樽までの移動をする。見ての通り北海道は広いが、どちらも大きな街なので、特急北斗号を使って札幌経由で小樽を目指せば、昼過ぎには十分着くことができる。しかし、乗るのは各駅停車のローカル線のみ。もちろん、事前に時刻表は調べているので、理屈の上では夕方に到着できることはわかっているが、各駅停車は観光用ではない。地元の人が生活の為に使用する列車である。見知らぬ土地から来た人間が何の不安もなく旅する為に作られてはいない。もし、何かのトラブルで列車に乗れなかったら・・。朝からずっとそわそわしていた。
函館から長万部、倶知安そして小樽
各駅停車で向かうルートは次の通りである。JR函館本線(1両車両)8時18分函館発、長万部行き。長万部には11時16分到着予定。続けて、JR函館本線(1両車両)13時18分長万部発、倶知安行き。倶知安には14時58分到着予定。最後に、JR函館本線(2両車両)15時18分倶知安発、小樽行き。小樽には16時28分到着予定。なんとも無謀に思えてきた。
発車30分前には函館駅にいたいので、7時30分過ぎにはホテルのチェックアウトを済ます。もし1本逃せば計画はすぐ破綻する。朝食のバイキングが美味しくて有名なホテルのようだったが、ここは簡単にして目的地に向かった。函館駅に着きまずは切符を買おうとするが、運賃表を見ても普通列車の長万部駅が載っていない。「どういうこと?」しばらく考える。「そうか、遠すぎて載らないんだ。じゃあ時刻表の料金通りの切符を買えば良いか」。が、券売機には調べたはずの料金に該当するボタンが無い。「・・・あせるな、まだ時間はある」。でも、このまま券売機を眺めていてもわからないので、みどりの窓口に行きJR職員の方に伝えると、切符を手配してもらうことができた。ああ早めに来てよかった、乗り遅れるところだったわ。それにしても職員の方、ちょっと驚いた雰囲気。長万部って。そりゃそうか、遠いもん。しかし、トイレ休憩なんて無いだろうな。下手したら3時間トイレなし。コーヒーは買ったが、恐くてとても飲めない。15分前には乗りこみ、ただただ緊張する。
大沼公園
あまりの緊張で写真を撮るのを忘れる。気づいたら40分くらい経ち、大沼公園というものが見えた。函館から数駅まで結構な人数が乗っていたが、ここまで来ると一両車両に私を含めて3人ほど。たくさんの荷物を抱えた、自然の中で暮らしている感じがするおじさんと、ひたすら爆睡をしている大学生っぽい女性。
北海道駒ヶ岳
大沼公園を過ぎると、次の赤井川で約15分の停車。15分!?。先を急ぐ特急北斗号を通す為である。乗った後に気付くのだが、この後もちょくちょく10分近く停車があった。そのおかげでトイレに行ける。駅舎の外にあるトイレでも、JR職員の方は快く通してくれた。ありがとう。東京じゃあ話しかけてもとりあってもらえないから、ちょっと想像してなかった優しさ。これでコーヒーも飲める。
森
1時間半近くで森駅まで来た。海が見える。内浦湾だ。噴火湾とも言うらしい。この時間だけで津軽海峡ではない海に出会う。北海道は、海の懐が誠に広い。
八雲
森から八雲へ。ローカル線が内浦湾の海岸沿いをひたすら走っていく。力強い。そして、どこか凛としている。
八雲
草原の向こうに波立つ海が延々と続く。その手前に人間によって敷かれた線路がある。その線路を揺られながら、黙々と北上している。「だいぶ来たんだなあ」と。自分の意思でここまで来たはずのに、なぜか自然と導かれたような感覚が湧いてくる。あの白い波のように、「今」が延々と続きますように・・。けど、永遠は存在しない。この旅1番のハイライトかもしれない。
長万部
時間通り第一関門だった長万部に着いた。よかった。駅すぐ横が観光案内所になっていた。ここから次の列車まで2時間ある。お腹空いたな。でも、まずはトイレを探す。「呑み鉄」とか言いつつ、ここまで恐くてアルコールはなし。
ラルズマート
ご飯を探しに散策すると、スーパーを見つけた。ラルズマート。スーパーほど旅情溢れるものはない。地元の方に紛れて買い出しをする。おっ、今日はほっけかあ。他にイカの揚げ物、鳥の唐揚げ、ビール、鮭のむすび。イートインコーナーがあったので、一人晩餐を開始した。レジ打ちの声を横で聴きながら、思わず唸る「旨い」。
山線
13時前に駅へと戻ると4番ホームに列車が待っていた。続いて運行1日4本のみという、函館本線の山線。何とも秘境めいた路線なのだが、10人近くは乗っていて、鉄道ファンチックな人もちらほら。だって準備万端って感じだし。同じやなあ。そして、目の前にトイレ。助かった。でもアルコールを買い忘れた。まあいいか(ファン失格)。
二股駅
ゆっくりと進んで行く。次は二股駅。何かドキッとする。
目名駅
目名駅。左側に座ったので左側を主に。右側の駅舎は省略してます(乗客が写るため)。
ニセコ駅
おお、あの有名なニセコ。
ニセコ
草木が森のように力強いのは、川が多いことと関係あるのだろうか。沿線の景色には川がたくさんあった。
倶知安駅
時間通り第二関門の倶知安駅に着いた。よし、ここで最後の乗り換えだ。
小沢駅
次は右側に座った。ここまで来れば小樽は近い。「最悪タクシーでも行けるか」、なんて思ってもいないことを考える。心の余裕だね。
余市駅
ああ余市駅だ。長かった山の風景が終わる。ここはこの旅で必ず訪れたかったところ。でも、今日は小樽直行。2日後にまた会おう。
小樽駅
16時28分、定刻通り小樽駅到着。各駅停車で本当に着くことができた。感慨に浸ると思いきや、ホテルホテル。緊張と感動の連続が続きすぎて頭の中はヘトヘトだ。今日はすぐにチェックインをしたらご飯は簡単に済ませ早めの就寝。過酷な3日目だった。
<4日目>
4日目に突入。大移動を全うしことで身に纏った達成感が、朝から気持ちを満たしてくれる。もう長距離はないよ、と思うと安心で。今日はゆっくりと観光することにした。
小樽運河
観光といっても、全く調べておらず。ぷらぷらと小樽運河によってみる。どうやら小樽運河に鮭が遡上してきたらしい。確か何匹かいたが、撮り忘れ。まあ、観光となると気合が入らん。そもそもこんな記事書くつもり、まるで無かったからな。まあいいいや、ぼーっとして歩こう、ずっと。ここにいれるだけで満たされている。
小樽運河
観光用看板をボケっと眺めていると、小樽マスターらしき、小さなおじさんが話しかけてきた。「お兄さん、どこから来たの」。「東京です」。「この辺はねえ観光地化してて、本当の小樽じゃないよ。観るならねえ、小樽水族館とかねえ、ずっと北の岬があるところだよ。あれこそが本当の小樽の姿だよ」。「そうなんですね」。「どうやって来たの、車?」。「電車です(東京から車で来れるのか?)」。話半分の姿勢だったので諦めの様子。「いつでも声かけてくれよ」と言って、すっと去って行った。この辺は観光地化か・・。まあそうだろうな、有名だし。でも、小さなおじさんの立ち振る舞いが、観光地化の権化に見えてしょうがないが。
観光地化という、どこかネガティブな響のある言葉。でも、どこの観光地もそうなのだろう。今までの経験に基づいて形式ばっていく。そして効率が良くなっていく。迎える側にはそこでの生活があるからね。生活を曝け出すことで成り立つ生き方。その犠牲を最小限にしたいなら、「形式」なのかもしれない。でも、今の自分には、観光地化か否かは、どうでもよくて。ただ、ぼーっとしてこの街を歩いている。
運河にはたくさんの小学生がいた。美術の時間かな、どうもみんな写生しているらしい。「こんにちは!」「こんにちは!」大きな声でみんな挨拶してくれた。「こんにちは」。嬉しいね。鮭の遡上に気持ちの良い挨拶。観光地化もいいじゃない。
小樽運河
北に行くと本当の小樽か、よし行くぞ、と運河の北側まで歩いた。移動範囲の限界まで来てみた。
プレスカフェ
すると疲れた。近くに倉庫を改装したアメリカンチックなカフェがあったので、ご褒美のビールとワインを献上する。よく頑張った。
小樽芸術村
地域クーポンというありがたい券を頂いたので、もう少し名所を回ってみた。
堺町本通り
このオルゴール堂は随分昔(20年〜30年前)に来た記憶がある。すごい、まだ残っているんだ。それにしても、小樽の人は標準語に近いね。若者もかなり多いし、函館とは色々違うんだなあ。
この後、お腹が空いたので駅前の通りまで戻ってKFCに入って遅めの昼食。この旅始まってから3食海鮮だったので、普通のものが食べたくなった。中に入ると、なぜか女子中学生らしきグループで席が満杯。隅の方の一人席でキャーキャー声をBGMにして完食。ホテル近くのファミリーマートで夜の晩酌用のおやつを買い、部屋でゆっくりしながら気持ちよく酔いがまわった位に4日目が終了した。
<5日目>
5日目。天気がまずまず良い。今日は一昨日通り過ぎた余市に行く。余市にはあの有名な、ニッカウヰスキーの余市蒸留所がある。行き当たりばったりな旅だが、蒸留所はコロナの影響で、予約しないと入れなくなっていたので、事前に予約済み。内部の見学の他に、ウイスキーの飲み比べと北海道の食を味わいに行く。
小樽駅
観光名所とKFCの街、小樽。ありがとう、お世話になりました。
余市駅
11時20分。余市へはJR函館本線に乗って、小樽から30分弱で到着。3日目のルートを少し逆戻りした格好になる。さあ、楽しみだ。ちなみに、ウイスキーの知識は初級者。飲むのが好きです。
蒸留所入り口前
蒸留所は駅から歩いてほんの数分。おおこの外観よ。見たことある。本当に来たんだ。
案内図
今は自由見学無しで、ガイドの方に約30分案内してもらう。参加者は約15名ほど。
蒸留機
さっそく蒸留所を見せてもらう。今まさに稼働中で中は暑かった。そして、独特の匂いがする。余市は、原料である大麦やフレーバーを加えるピートが豊富なんだそう。左から3番目の奥まったところに見える蒸留機は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝の代からのもの。この蒸留機の中で一際小さかった。
事務所
ニッカウヰスキーの設立当初の事務所。正式名称は大日本果汁株式会社。ここから「に」と「か」をとって「ニッカ」となったらしい。
余市蒸留所の風景
絵に描いたような、こんなにも美しい写真が運良く撮れた。今、とても静寂なところに立っている。痛いくらいに純粋でまっすぐな空気が漂う、余市という街。蒸留所。ここで自然と人間が真剣に向き合うのだろう。そしてウイスキーは、ゆっくり、ゆっくりと静かに誕生していく。何十年と続く営みだ。これほどの「静」を纏ったウイスキーも、東京という人ごみの中に揉まれると、夜の喧騒の中に身を置いているイメージが強い。誕生地と現在地の強烈な対比に、心の中が詰まるようにも感じた。これも定めということか。
竹鶴政孝邸
竹鶴政孝邸。窓が多く耐震基準的に脆いので、内部は見れなかった。
倉庫
樽を寝かせる長い倉庫。ここで何十年と保管されるので、完成までうんと時間がかかる。だから品薄になっても、すぐに量産出来ない。
レストラン・樽
おお、お待ちかねの昼食時間が来た。
昼食
先附け3種に、刺身といくらの小鉢。メインは道産秋鮭のちゃんちゃん焼きだ。美味しそう。ウイスキーは、余市シングルモルト、ピーティ&ソルティ(青)、シェリー&スウィート(赤)を頂いた。う〜ん、何もいうことはありません。
余市蒸留所の風景
もう一度カラーで。ずっとここにいたい。心からそう感じた。
が、そういうわけにもいかない。見学ツアーと食事が終わり、近くの試飲コーナーに少し立ち寄って、お土産も購入した。名残惜しいが、後自分に出来ることは、この蒸留所を発つことのみ。「物事には終わりがある」。ここに入った瞬間から定まった運命でしかない。
余市駅の運賃表
14時50分余市駅到着。ここから小樽を通り越して一気に札幌へ向かう。ありがとう余市。この目に映し出された景、開拓への情熱が辿る香り、忘れない。
JR函館本線
15時2分発JR函館本線小樽行き(小樽乗換)。夕刻前の気持ち良い秋晴れの中、この旅1番のお友が やって来ました。かっこいいなあ。
呑み鉄
とうとう。5日目にして悲願の呑み鉄タイムを迎える。JR函館本線は、目の前の石狩湾をスレスレまで近づいて走っていく。こんな車窓、なかなか出会えないわ。大都会の札幌に向かうこともあってか、どことなく高揚感のある車内だ。前の方はほうじ茶、わいはウイスキーなんて、多少の罪悪感ね。何をするでもない。頭の中は空っぽだ。車窓を眺め、ただただ今を噛み締めいている。蒸留所で買った竹鶴と共に至福の時を頂きました。
札幌駅
16時7分定刻通り札幌駅到着。着いた。最終目的地の札幌だ。
大通公園
札幌、大きい街だね。びっくりした。そして、土曜日ということもあってか、週末を楽しむ自由な空気が、あちこちに流れていた。
この後ホテルでチェックインを済ませ、少しすすきの界隈を散歩して、近くの回転寿司で晩御飯。いつも通り晩食とおやつをコンビニで買ってホテルへ帰着。蒸留所に呑み鉄、夢を叶えた5日目だった。
<6日目>
本日は6日目。青森からはじまった旅も、北海道の道庁所在地である札幌までたどり着き、いよいよ終盤にさしかかってきている。5日目までを過ごして、当初からの旅の目的は、全て果たすことができていた。となると、明日夕方の飛行機で東京へ戻るまでは、札幌で自由時間である。飛んで跳ねて喜んでいいものなのに、4日目の小樽で味わった達成感は、残っていない。かといって帰りたいのか、いや、ずっとこの空気の中にいたい。不安ながらはじめたことが果たせ、今は終わりに向けた心の準備期間なのだろうか。
しかし、これも旅をはじめた時から決められた定め。「終わりに向かって過ごす」。それも意外と悪くないかもね。旅情とは似つかわしくない、近代的で綺麗な街並みだが、最後の北の街をボーッと過ごし、少しでも形にしたいと思います。
時計台
前日は大通公園近くの出来たばかりのビジネスホテルに宿泊。綺麗で機能的、そして料金も全然高くない。この旅でのホテルの写真は全く撮ってないのだが、ビジネスホテルとシティホテルと半々くらいで利用した。そして、ビジネスホテルは若者が圧倒的に多い。それは料金もだが、こういったホテルという「箱物」の機能性を優先して選ぶからなんだろう。その反面、スタッフなどの「人」には興味なしといった感じが顕著で、「おはようございます」という気持ちの良い挨拶を、スルーなんてのはよく見かけた。う〜ん、大学生ぐらいの年頃だとそういうもんなのか。「おいっ」と(心の中で)叫びつつ、美味しい朝ごはんを頂戴した。
さあ、どこに行こうか。特に決めてないので、時計台に来た。「おお・・」。これが、あの、時計台?「小さいな(心の中)」。でかい声で「小さいな、おい」なんて言ったら怒られる。すみません。札幌が大いに発展してきた証左ということなのでしょう。それくらい、周りのビルとの対比では小ぶりに見えた。
それにしても、札幌は歩きやすい街並みと道路だ。東京でいうと、なんだか日本橋・京橋・八丁堀あたりのような雰囲気がある。よし、どんどん歩いて行こう。後悔するぐらい歩いてやる。
テレビ塔
南に進むと決めた。すると、こちらからの眺めでもう一度テレビ塔。好きなんです。
二条市場
さらに南へとまっすぐ行進。途中コーヒー休憩も入れたりあっちこっち無駄に眺めたりして、曇りがちの冷たい空気を味わいながら二条市場まで来た。少し早いが昼ご飯としよう。適当に海鮮丼屋に入ると、気持ちの良い挨拶が方方から飛んでくる。おおっ、威勢が良いね。ビジネスホテルの若者よ、挨拶っていいもんだよ。メニューを見せてもらうと、わかりやすく海鮮ちらしがドンと載っていたので注文。そういえばちらしはまだ食べてなかったな。
携帯をいじって待っていると、奥の方から若い女性スタッフ同士のデカい声が嫌でも聞こえてくる。「私、ちらしやったことないんですけど」。「えっ。そうだっけ。まあいいや、ちらしなんてのせりゃあいいんだよ。のせろのせろガハハ」。「そうすっよね。のせまーす。ガハハ」。
・・おいおい。威勢良すぎだろ。丸聞こえだぞ。そんでそのちらし、わいが注文したやつだろ?数分後予想通り着丼。まあいいか、美味かったよ。それに綺麗なちらしだし。会計時もまた大きな声で挨拶してくれた店だった。
大通公園
すっかり虜になってしまった大通公園で、しばし着席。本当に風が気持ちいい。何時間でもいられる。木々が少し色づいてきていた。
大通公園2
離れたくない。ただそれだけしかない。
さっぽろ羊ヶ丘展望台
しばらく休んだ後、バスに乗ってさっぽろ羊ヶ丘展望台へ行った。バスに乗って40分くらいだろうか、市内中心部からはかなり離れたところにある。バスの本数が少なく、滞在時間は約20分ほど。
北海道庁旧本庁舎
とんぼ帰りで市内中心部へと戻る。少しだけ雨が降った。
京王プラザホテル札幌
北海道庁を少しだけ見学した後、コーヒー休憩をして、今日泊まるホテルへチェックイン。宿泊する最終日なので、格式のあるホテルを選んだ。スタッフの方も利用される方も皆、どこか会話を楽しんでいる、そんな空気が伝わるホテルですね。いつもであればこの後外へとご飯を食べに行くのだが、この日はホテル内で食事。最後の晩御飯なのでカウンターでお寿司を。予約もなしでいきなりお願いしたのだけど、快く対応してくれる。室蘭出身の料理長の北海道話を聞きながら、美味しい料理とお酒を頂いた。ありがとう、お店の方々。
有り難いことに部屋は高層階。窓から見える北海道大学を眺めながら、札幌での6日目を無事終了した。
<7日目>
7日目。いよいよ最終日です。長かった旅も、忘れ物をしないように気を付けて飛行機のチケットを握りしめるのみ。18時新千歳空港発なので、札幌を立つのを15時49分の電車と決めた。残りの時間は何も迷わない。歩いて歩いて歩き倒して、寿司食って帰るぞと決めた。目標は円山公園と北海道神宮へ。京王プラザホテルからは4km弱はありそう。でも、そんなことはどうでもよい。目的は歩くこと。この空気に触れていること。人と街の営みを目に焼き付けること。公園に行くのはその手段にすぎない。
部屋からの眺め
今日はとても天気が良い。有難すぎて感動。京王プラザホテル札幌の皆さん、ありがとう。午前10時前。よし、外に出るぞ。
大通公園
まっすぐ南下して大好きな大通公園へ。今日は月曜日。「自由の土曜日」「賑わいの日曜日」と違って「週明けの大通公園」の午前は、静かだ。でも、どこかピリッとした戦う社会人の覚悟のような空気もあり、街もそれに呼応するかのよう。さあ今週のはじまりだ。天気は良いんだ。ここからまっすぐ西へと歩けば、円山公園に到着する。40分〜50分くらいだろう。
途中清掃業者の方が、週末に出た大量のゴミ回収に奔走していた。「おい、何やってんだよ。こっちだよ」。多くの仕事量を目の前に怒号が飛ぶ。「すみません、気を付けます」。まだ新人なのだろう。上司と思われる方からゴミの回収と道順について指導を受けていた。ここは憧れの北の国。でも、夢の世界ではない。現実の生活がある。新人の方、頑張れ。
円山公園
11時過ぎ、円山公園に到着。意外と早かった。張り切り過ぎて速足感が強かったか。木々に陽の光が差して綺麗だ。せっかくだから奥まで進んで、動物園と球場も通ってみよう。
円山総合運動場
球場から声が聞こえる。高校生だろうか、野球の試合をしているよう。いいなあ、ちょっとだけ見たいなあと思ったが、どうも関係者だけ入場可のようだ。まあしょうがないかと思っていると、「こんにちは!」と大きな声と丁寧なお辞儀をしながら野球部員の方が挨拶をしてくれた。「こ、こんにちは(ちょっと驚く)」。すると、みんなお辞儀をしながら次々と挨拶してくれる。「こんにちは!(お辞儀)」「こんにちは!(お辞儀)」。20人くらいはいただろう。頑張って返す「こんにちは」。なんて気持ちの良い青年の方々だ。本当にありがとう。皆さんの挨拶に出会えただけで今日ここに来て良かったと、心からそう思った。
北海道神宮
北海道神宮で旅のお礼を。今日まで怪我もなく、忘れ物もなく、無事に過ごすことができました。有難うございます。でもね、心はこの地に置き忘れそうです。
離れ難い。
よし、行こう。
札幌駅
札幌駅へ戻った。だいぶ粘った。そして、往生際も悪かったな。でも本当にこれで最後だ。さあ東京。気持ちは東京へ向かう。後は体がついて行くまでのことだ。
札幌駅
有難う北海道。それしかないんだ。名残惜しいんだな、やっぱり。それでは(お辞儀)。
新千歳空港へ
15時49分発JR千歳線エアポート新千歳空港行。ああ、最後に呑み鉄ができた。竹鶴よ、そしてJR北海道さん、本当に有難う。
- お詫び -
長い時間お付き合いいただき有難うございました。北海道の旅、いかがでしたでしょうか。文中でも触れましたが、そもそも記事を書くつもりが無かったので、写真足らずのところがあったかと思います。そういった箇所は、「自分が何を考えていただろうか」と当時の記憶をゆっくり思い出しながら、書いていきました。文頭を書きだしたのが10月の中旬頃で、書き終えたのが10月の末です。正直申しまして、この文末を書く頃には旅の思い出も名残惜しさも道中の感動も、薄く淡いものとなり、いつも通りの日常に心は覆われていました。あれだけ心が揺れたとしても、人間とは忘れる定めに生まれたものなのでしょうか。それは当たり前のことかもしれませんが、「また行こう」という気持ちと、形にして残したこの記事を慰めとして、淡い残りも明日から綺麗に忘れたいと思います。
「物事には必ず始めと終わりがある」。この旅が私に通じて教えてくれた、そして痛感させられたことでありました。
text&photos : takahasi kei