レイヤー半透明画像

株主総会決議による代表取締役の選定と印鑑証明書の通数の比較について

2023.8.9.WED


- 選定する機関と形態による、印鑑証明書の通数の違い -


代表取締役の選定に関する印鑑証明書につきましては、商業登記規則第61条6項に規定がありまして、押印すべき者と押印をする書面につき、1号から3号まで振り分けられております。このうち、1号は取締役会非設置会社と取締役会設置会社、2号は取締役会非設置会社、3号は取締役会設置会社に関する規定になります。この度の解説につきましては、取締役会設置会社を前提に書いていきますので、ご注意ください。また、同条但書の「変更前の代表取締役が届出印を押印」に関しましては、全て共通しておりますので、個別での記載は割愛いたします。

- 株主総会による場合 -

議長及び出席取締役が、株主総会議事録に市町村長へ登録した実印を押印し、印鑑証明書(市町村長作成)を添付します(商業登記規則第61条6項1号)。よって、株主総会による場合、議長および出席取締役人数分の印鑑証明書が必要となります。

- 株主総会を省略した場合 -

株主への提案を行い、株主全員の同意を得ることによって、株主総会を省略することができますが(会社法第319条)、省略した場合であっても、株主総会議事録は作成する必要があります(いわゆる書面決議)(会社法施行規則第72条4項1号)。しかしながら省略している関係上、議長も出席取締役も存在しないため、登記実務上、議長に相当するものが議事録作成者であるとの観点から、議事録作成者が、株主総会議事録に市町村長へ登録した実印を押印し、印鑑証明書(市町村長作成)を添付します(商業登記ハンドブック第3版153頁・商事法務)。よって、株主総会を省略した場合、議事録作成者の印鑑証明書が必要となります。

- 取締役会決議による場合 -

出席取締役および出席監査役が取締役会議事録に市町村長へ登録した実印を押印し、印鑑証明書(市町村長作成)を添付します(商業登記規則第61条6項3号)よって、取締役会決議による場合、出席取締役および出席監査役人数分の印鑑証明書が必要となります。なお、取締役会議事録につきましては、代表取締役の選定に関わらず、出席取締役および出席監査役に署名または記名押印義務がありますので(会社法第369条3項)、商業登記規則第61条6項但書規定の適用(変更前の代表取締役が届出印を押印)がありましても、出席取締役および出席監査役は取締役会議事録への押印(認印)は必要となりますので、ご注意ください。

- 取締役会を省略した場合 -

定款に定めのある会社において、議決権の行使が可能な取締役および業務監査権限を有する監査役に対して提案を行い、当該提案事項について取締役全員の同意を得た上で、監査役から異議が出ないことによって、取締役会を省略することができますが(会社法第370条)、省略した場合であっても、取締役会議事録は作成する必要があります(いわゆる書面決議)(会社法施行規則第100条4項1号)。しかしながら省略している関係上、出席取締役も出席監査役も存在しないため、登記実務上、商業登記規則第61条6項3号を類推し、同意の意思表示をした取締役全員が、取締役会議事録に市町村長へ登録した実印を押印し、印鑑証明書(市町村長作成)を添付します(商業登記ハンドブック第3版399頁・商事法務)。よって、取締役会を省略した場合、(同意者の)取締役全員分の印鑑証明書が必要となります。

印鑑証明書の通数の比較

印鑑証明書の通数の比較

-株主総会の書面決議による選定の利点とその可否 -


以上のように、代表取締役の選定方法によって、登記手続きにおいて提出が求められる印鑑証明書の通数には違いがございます。特に、株主総会の書面決議により選定した場合は、議事録作成者のみ用意すれば足りるので、大変効率が良いかと思われます。取締役会設置会社ですと、最低でも取締役は3名以上在籍していますから、人数分の印鑑証明書を用意するというのはかなり骨の折れる作業ではないでしょうか。また、この方法によりますと、株主総会後の取締役会の開催を省略できるのも利点かと思われます(その理由につき、登記情報631号31頁)。さらに、代表取締役の交替の場面であっても活用できますので(事例で学ぶ会社法実務全訂版236頁・中央経済社)、大変有意義な選定方法かと思われます(取締役の交替による株主総会議事録の作成権限者につき、事例で学ぶ会社法実務全訂版180頁・中央経済社)。

ただし、株主総会の書面決議には株主全員の同意書が必要ですので、株主の人数次第によって敷居は高くなりますが、同意書に実印や印鑑証明書を求める規定は会社法上見当たりませんので、認印(株主の届出印等)での対応で問題ないと考えます。

最後に取締役会設置会社において、株主総会決議によって代表取締役の選定をすることを、定款に設けることについての可否についてですが、(以下、事例で学ぶ会社法実務全訂版12頁・中央経済社)取締役会設置会社であっても、定款で、取締役会の決議事項の全部または一部について株主総会の決議事項とすることは、「定款で定めた事項」を決議するものとして許されている、との見解を支持しまして、問題ないと考えております。

株主総会の書面決議による選定の利点

株主総会の書面決議による選定の利点

text&illustration : takahasi kei


qei plus

© 2019 qeiplus.jp